アナログとデジタル

アナログ技術へのこだわりは呪いか?

カメラマンのあかねちゃんが、Adobe Photoshopを契約し、数時間で解約していました。(笑)
Photoshopは、写真の加工や編集をするソフトです。
あかねちゃんが解約した理由は、「趣向が違う」から。

 

あかねちゃんは、「加工しないで納品すると教えられた」ことを呪いと言っていますが、デザインの現場にいる者として、声を大にしていいます。
それを「呪い」と呼ぶならば、大いに呪われてください!!

 

 

アナログ技術は素晴らしい。

デザインの現場で写真を使う場合には、デザイナーのラフスケッチを元にカメラマンに撮影を依頼します。

色味だったり、光や影の出方だったり、温度感だだったりを共有するために、必死になって伝えます。

世界観を共有したら、次の難関は、その再現性。

どうやったら、イメージ通りの写真が撮れるか。

これは、カメラマンの腕の見せ所です。

 

《無理難題な撮影》

5年前、とあるカメラマンに無理難題な撮影依頼をしたことがあります。

助産師養成の専門学校のパンフレット表紙の撮影でした。

クライアントから、人物を入れないデザインにして欲しいとの要望でしたので、 螺旋状の遺伝子のイメージでいこうと決めていました。

遺伝子

そこで、思い出したのです。

お祭りの露店の軒先に付いていた、螺旋状のキラキラしたプラスチック。

夏の夜の生温い夜風を受けて、くるくる回る螺旋は、とても幻想的で遺伝子みたいだと思っていました。

検索すると、あれは、鳥よけだったとすぐに分かりました。

これだ!!!!

絶対、目を惹くビジュアルになると確信していましたが、果たしてこのイメージを共有できるのか…。

カメラマンだけではありません。

目に見えない、そのビジュアルでいくことをクライアントにも納得してもらわなければいけないわけです。

 

ラフを描き、クライアントには、プレゼンをし、またカメラマンには、この撮影が可能かを確認します。

イメージを共有するため、webから写真を拾って合成もしますが、そもそもこれが撮影可能なのだろうか…。

表紙イメージ合成
こちらが、合成して作った表紙イメージ。同じように撮るのは至難の業です。

 

クライアントを説得する以上に、カメラマンの撮影が困難だろうと思いましたが、カメラマンは見事にイメージ通りの写真を一枚に収めてくれたのです。

そして当時、実際に世に出た表紙がこちらです!

合成も加工も一切なしです。

今でも一番忘れられない感動したプロの仕事です。

経験値と知識とセンスが成せる技術です。


モビールは市販のものなのですが、「お腹の赤ちゃんが逆子じゃなければもっと良かったなぁ。」とおっしゃった学校の先生に、またプロを感じたのでした。

 

 

 

デジタルを使いこなせる技術。

イラストレーターやデザイナーにも、「デッサンも出来ないのに、デジタル技術に頼ってるだけの人なんて!」とおっしゃる方もみえます。

私も大学受験の頃は、一日10時間以上ひたすらにデッサンをするという拷問のような生活を送っていたこともあるので、身についた知識と技術は活かされています。

でも、必ずしもデッサン上、狂いないことが求められるとも限りません。

それよりも、例えデッサン上、正しくなかったとしても、イメージ通りのビジュアルを作る(もっと言えば、誰もイメージすら出来なかった世界を創り出す)技術は、全くの別物です。

アナログ技術とデジタル技術は、直線上に存在し比べられるというものではないのです。

デジタルが先駆けの頃は、職人技のどこまで近づけるかという点でデジタル技術の優劣がジャッジされることもありましたが、今はもうそんな時代ではありません。

ありとあらゆるデジタル技術があり、その化学反応で新しい表現が創れます。

割烹料理のいろはを熟知した料理人と、化学反応を利用して五感に響く料理を作るシェフとでは、持っている知識も技術も全く異なりますよね。

技術のベクトルの方向が全く違うのです。

作品に作家の精神が宿った時、琴線に触れる作品が誕生するのだと信じています。

それが、アナログでもデジタルでも両方が融合された表現でも。

 


 

いつも私の無理難題な撮影をスマートにしてくれるカメラマン
STUDIO SIERRA|山口達也さん
http://studiosierra.ciao.jp

ポートレートもアートな写真も素晴らしいセンスのカメラマン
なるかわあかねさん
https://akanenarukawa.work

 

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